【世界のネット事件】7年半の執念で無罪になった金子さんのWinny事件

この記事は約9分で読めます。
記事内に広告が含まれています。

みなさん、いかがお過ごしだったでしょうか。

どうも、れきをくん(@rekiwokun)です。

みなさんは「ピア・ツー・ピア」という仕組みをご存知でしょうか?

一昔前は「このソフトでダウンロードすればただ映画見れる」という人が多く、利用していた人も多数いたのではないでしょうか?

また、現在でもLinuxなどのISOファイルをダウンロードするのにBitTorrentなどの「ピア・ツー・ピア」を利用している人がたくさんいると思います。

今回はその「ピア・ツー・ピア」の1つである『Winny』の事件です。

では、今回の講義を始めます。

Winny事件とは何か

Winny事件とは、分散コンピューティング技術である「ピア・ツー・ピア」を使ったファイル共有ソフトである「Winny」の開発者の金子勇さんが「著作権法違反幇助」の罪で逮捕され、7年半もの時間をかけ、無罪を勝ち取った事件のことです。

裁判例検索に判決文が公開されているので、リンクを置いておきます。

事件の概要

2001年

ファイル共有ソフトである「WinMX」が流行します。

音楽・漫画・DVD・ゲームソフト等の市販のコンテンツを「WinMX」を通じて、インターネットで入手されることが増えました。

これらの行為が著作権法の送信可能化権の侵害にあたるとして、初の逮捕者が出ました。

2002年

金子勇さんが「Winny」の開発を開始します。

「WinMX」が原因で逮捕者が続出したので、匿名性を高くすることを意識して開発されます。

Winnyという名前は「WinMX」の後継になることを目標とする意味を込めて名付けられました。後継として進んでいることを意味して、「MX」を1つ進めた「ny」を付けました。

社会問題化

開発当初から匿名性の高さから人気があった一方で、音楽・漫画・ゲームなどの著作物の流布による著作権侵害や児童ポルノ・コンピュータウィルスなどの犯罪の温床として、警察の捜査の手が及ぶことになります。

しかし、捜査は難航します。

Winnyは最初にファイルをアップロードした人が分からなくなるような匿名化の仕組みを実装していたのです。

アップロードした人は確実に故意犯なのにも関わらず、その情報は全く掴めないのです。

そして、その故意にアップロードされた情報を受信して再送信する側は、何も知らずに使用するわけです。

匿名化を打破する鍵

しかし、ここで難航を極めた捜査に救いの手が表れ進展するのです。

実態を把握することは絶対に不可能だと思われていた高度な匿名化技術を打破する噂を捜査関係者は耳にしました。

「Winnyの掲示板機能が匿名性の穴になっている」

掲示板データはWinnyを利用する人のパソコン内に保存されています。

とういうことは、そのデータを解析すればIPアドレスを割り出すことができるわけです。

2003年11月27日

Winny利用者初の逮捕者がでました。

公衆送信権を侵害した罪として著作権法違法の嫌疑でした。

1人はゲームボーイアドバンスのソフト26本を公開していました。

もう1人は映画2本を公開していました。

2004年5月9日

ソフトウェア開発者の金子勇さんが2003年事件の共謀共同正犯として逮捕されました。

金子勇さんは著作物のアップロードは一切していません。

通常の「ピア・ツー・ピア」の概念としては、ダウンロードすると同時にアップロードもされる仕組みなのですが、金子さんが使用していたWinnyはダウンロード専用の特製Winnyでした。

警察はこれを摘発逃れとして考えていたようです。

スポンサーリンク

裁判の概要

2004年5月31日

Winnyの開発者である金子勇さんが起訴されます。

起訴事実は「正犯である2人(2003年11月27日の逮捕者)の著作権法違反の幇助行為でした。

2004年6月1日

保釈されます。

2006年7月3日

検察側は論告求刑。

金子勇さんに対して懲役1年を求刑します。

2006年9月

弁護側最終弁論で第1審が結審します。

2006年12月13日

判決の言い渡し日。

裁判長は、金子勇さんに著作権法違反の幇助行為により、罰金150万円を言い渡しました。

金子さんの敗訴です。

判決理由は、Winnyを公開することによって、著作権を侵害する目的で広く利用されることを認識しながら不特定多数の人が入手できるようにしたことは、幇助罪が成立するとし、「利用者の多くが著作権を侵害することを、明確に認識、認容しながら公開を継続した。影響は大きいが、自身は経済的利益を得ていない」と話していました。

検察・被告の双方が即日、控訴します。

2009年10月8日

高裁では一審の地裁判決を破棄し、無罪を言い渡します。

金子さんの勝訴です。

判決理由は、「悪用される可能性を認識しているだけでは、幇助罪には足りず、専ら著作権侵害に使わせるよう提供したとは認められない」とのことでした。

2009年10月21日

検察側は判決に納得がいかずに、上告します。

2011年12月19日

最高裁判所第三小法廷では、最高検察庁の請求を破棄し、無罪の確定判決を出します。

判決理由は、「例外的とはいえない範囲の者がそれを著作権侵害に利用する蓋然性が高いことを認識、認容していたとまで認めることは困難である」とのことでした。

Winny事件から学ぶ著作権法

著作権には著作者以外のものにも権利が認められます。

その認められる権利のことを『著作隣接権』といいます。

著作隣接権とは、著作物の創作者ではないけど、著作物の伝達に重要な役割を果たしているから認めようという権利のことです。

(著作隣接権)
第八十九条 実演家は、第九十条の二第一項及び第九十条の三第一項に規定する権利(以下「実演家人格権」という。)並びに第九十一条第一項、第九十二条第一項、第九十二条の二第一項、第九十五条の二第一項及び第九十五条の三第一項に規定する権利並びに第九十四条の二及び第九十五条の三第三項に規定する報酬並びに第九十五条第一項に規定する二次使用料を受ける権利を享有する。
  レコード製作者は、第九十六条、第九十六条の二、第九十七条の二第一項及び第九十七条の三第一項に規定する権利並びに第九十七条第一項に規定する二次使用料及び第九十七条の三第三項に規定する報酬を受ける権利を享有する。
  放送事業者は、第九十八条から第百条までに規定する権利を享有する。
  有線放送事業者は、第百条の二から第百条の五までに規定する権利を享有する。
  前各項の権利の享有には、いかなる方式の履行をも要しない。
  第一項から第四項までの権利(実演家人格権並びに第一項及び第二項の報酬及び二次使用料を受ける権利を除く。)は、著作隣接権という。
(著作者の権利と著作隣接権との関係)
第九十条 この章の規定は、著作者の権利に影響を及ぼすものと解釈してはならない。

著作権法 | e-Gov法令検索

このWinny事件では、2つの著作隣接権が問題となります。

順にみていきましょう。

公衆送信権

(公衆送信権等)
第二十三条 著作者は、その著作物について、公衆送信(自動公衆送信の場合にあつては、送信可能化を含む。)を行う権利を専有する。
  著作者は、公衆送信されるその著作物を受信装置を用いて公に伝達する権利を専有する。

著作権法 | e-Gov法令検索

公衆送信権とは、著者物を公衆に向けて「送信」することに関する権利となります。

これだけでは難しいと思いますので、公衆送信の定義を確認してみましょう。

(定義)
第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
 ・・・
 七の二 公衆送信 公衆によつて直接受信されることを目的として無線通信又は有線電気通信の送信を行うことをいう。

著作権法 | e-Gov法令検索

著作権法2条7の2項に、はっきりと書かれています。

公衆のみんなが受信することを前提として、通信の送信をすることを公衆送信といいます。

つまり、公衆に向けて送信がされていれば、無線・有線に関係なくすべての送信方法が「公衆送信権」の対象となります。

例えば、インターネットにある自分のサイトに自作の短歌や絵をアップロードすることが該当します。

有名な事件であれば「漫画村事件」でしょう。

インターネット上に他人の著作物である漫画・音楽・絵・ゲーム等をアップロードするのは、これまで見てきた通り「公衆送信権」を侵害する行為となります。

公衆送信権の概念

上の図の通り、公衆送信権の下位概念があります。

それが放送権、自動公衆送信権と有線放送権です。

それらを支える概念として送信可能化権があります。

送信可能化権

(送信可能化権)
第九十二条の二 実演家は、その実演を送信可能化する権利を専有する。
  前項の規定は、次に掲げる実演については、適用しない。
   第九十一条第一項に規定する権利を有する者の許諾を得て録画されている実演
   第九十一条第二項の実演で同項の録音物以外の物に録音され、又は録画されているもの

著作権法 | e-Gov法令検索

さきほどお伝えしたとおり、公衆送信権を支える概念として送信可能化権があります。

公衆送信権と同じで、送信可能の定義についてみてみましょう。

(定義)
第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
 ・・・
 九の五 送信可能化 次のいずれかに掲げる行為により自動公衆送信し得るようにすることをいう。
   公衆の用に供されている電気通信回線に接続している自動公衆送信装置の公衆送信用記録媒体に情報を記録し、情報が記録された記録媒体を当該自動公衆送信装置の公衆送信用記録媒体として加え、若しくは情報が記録された記録媒体を当該自動公衆送信装置の公衆送信用記録媒体に変換し、又は当該自動公衆送信装置に情報を入力すること。
   その公衆送信用記録媒体に情報が記録され、又は当該自動公衆送信装置に情報が入力されている自動公衆送信装置について、公衆の用に供されている電気通信回線への接続を行うこと。

著作権法 | e-Gov法令検索

公衆に実演が受信されるこを目的として、通信をして送信されることを公衆送信といいます。

その送信を可能とするかどうかの許諾をする権利が送信可能化権です。

つまり、一言で説明すると、送信可能化権とは実演を送信可能化する権利を専有する実演家が有する許諾権のことです。

公衆送信権と送信可能化権の違い

意味だけを見てみたら、公衆送信権と送信可能権は非常に似ていると思います。

では、このよく似ている2つの意味を再確認してみましょう。

この2つの決定的な違いは「送信の有無についてコントールできるかどうか」です。

前者である公衆送信権は、自動公衆送信可能な状態にしたりとコントールができません。

一方で送信可能化権は、自動公衆送信可能な状態にしたりとコントロールすることができます。

スポンサーリンク

まとめ

今回の記事は書くのに非常に時間がかかりました。

「漫画村」を中心として著作権法の改正がされました。

これまで長らく運営されてきた「NAVERのまとめ」も中身がリーチサイトなので、運営が終了しました。

まとめサイトはあってくれると違法な侵害行為を行っていない場合は、解禁する形をとってくれるとより便利になりそうな気がします。

今回の講義はこれで終わります。

では、またお会いしましょう!

スポンサーリンク
タイトルとURLをコピーしました