佐賀県でもネット誹謗中傷防止条例が!先駆者の群馬県と大阪府との違いは?

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みなさん、いかがお過ごしだったでしょうか。

どうも、れきをくん(@rekiwokun)です。

全国で3例目となる誹謗中傷条例が佐賀県で制定されます。

これは九州7県初の誹謗中傷条例となります。

全国で先駆けて制定されたのは、令和2年12月の群馬県です。

それに追随するように大阪府が令和4年の春に制定しました。

それからさらに1年が過ぎ、佐賀県でも同様な条例がされる決定がされました。

今回の記事では、群馬県と佐賀県と大阪府の各条例を確認しながら比較検討をしていきたいと思います。

では、今回の講義を始めます。

全国初となる群馬県の誹謗中傷条例

制定の背景

インターネットでの誹謗中傷を理由に、自ら命を絶つという痛ましい事件が多く発生するなど社会問題として大きな課題となっていました。

実際に、国が運営をする違法・有害情報相談センターでの相談件数も右肩上がりで終わりが見えません。

そこで国では発信情報開示請求手続きの簡素・迅速化を図るための法改正が進められました。

この法改正については別の記事にしているのでご覧ください。

群馬県内でもコロナ対策として、小中高で1人1台のパソコン配布などをする上で、児童・生徒をネット被害から守る必要性が高まりました。

そこで、ネット上の誹謗中傷に対する条例の制定が必要になったわけです。

制定の過程

有識者会議

条例案の検討を進めるために専門家である弁護士・大学教授・ネット教育アナリスト等で構成する有識者会議を設置されました。

これは、国で法案を作成するときにも開かれる諮問委員会のようなものです。

この有識者会議で審議されたのは、被害者支援施策の方向性や支援施策のあり方、条例案の内容等です。

ここで条例の具体的な骨子が定まります。

被害者へのヒアリング

そして何より忘れてはならないのが、被害者からのヒアリングです。

実際に、ネット上で誹謗中傷された被害者から被害の実態や行政への要望をヒアリングすることでより具体的な案へとなります。

県議会での審議

条例として県全体に法的拘束力を及ぼすためには、民主主義の元で選ばられた県の代表者で構成される県議会での徹底的な審議が大事です。

特に重要視されるべきは、罰則の規定の必要性や県で実施する施策です。

そして、最終的には原案どおり全会一致で可決されました。

条例の内容

条例は、前文と全10条からなる非常にシンプルな構成です。

(県の責務)
第三条 県は、被害者を支援するための施策及び行為者を発生させないための施策を策定し、及び実施する責務を有する。

群馬県インターネット上の誹謗中傷等の被害者支援等に関する条例

まずは、第三条で県の責務をしっかりと挙げています。

  • 被害者を支援するための施策及び行為者を発生せないための施策を策定し、
  • これを実施する

では、具体的にどんな施策を策定していくつもりなのでしょうか。

それもきっちりと条文に書かれています。

(基本的施策)
第六条 県は、インターネット上で情報を発信する者の表現の自由に配慮しつつ、次に掲げる施策に取り組むものとする。
一 被害者の心理的負担の軽減を含めた相談体制の整備
二 県民の年齢、立場等に応じたインターネットリテラシーの向上に資する施策
三 前二号に掲げるもののほか、被害者を支援するための施策及び行為者を発生させないための施策

群馬県インターネット上の誹謗中傷等の被害者支援等に関する条例

群馬県としては、基本的には2つの施策に取り組むことにしていることが分かります。

  • 相談体制の整備
  • インターネットリテラシーの向上

事前の対策としてインターネットリテラシーの向上に関する教育を実施し、誹謗中傷被害に遭った場合の事後の対策として相談体制を整備する形を取っていると考えられます。

実際に、群馬県ではネットリテラシーの動画教材の発信や誹謗中傷窓口の設置などをしています。

大阪府の誹謗中傷条例

まずは誹謗中傷条例のベースとなる群馬県をお伝えしました。

次は、大阪府の誹謗中傷条例についてお伝えしていきたいと思います。

行為者を発生させない力強いメッセージ

(府の責務)
第三条 府は、行為者及び被害者を発生させないための施策、被害者を支援するための施策並びに行為者が再び誹謗中傷等を行うことを抑制するための施策を実施する。

大阪府/大阪府インターネット上の誹謗中傷や差別等の人権侵害のない社会づくり条例

大阪府では3点にういての施策を実施する方針であることが分かります。

  • 行為者及び被害者を発生させないための施策
  • 被害者を支援するための施策
  • 行為者が再び誹謗中傷等を行なうことを抑制するための施策

大阪府としての特色なのかなと感じたのが、1つ目の施策である「行為者及び被害者を発生させないための施策」です。

一番前に「行為者」と書かれているので、「大阪府としては一番に行為者を発生させない!」という力強いメッセージを感じることができました。

次に「被害者を支援するための施策並びに行為者が再び誹謗中傷等を行うことを抑制」です。

被害者を支援することを優先しつつも、行為者が再び誹謗中傷等を行いための施策も実施しますよ、ということだと思います。

これも被害者支援が前に書かれていますし、「並びに」と並列に並べて行為者のことが書かれている点からも、どちらの施策も同じくらい重要だという認識なんだと考えています。

(基本的施策)
第八条 府は、次に掲げる施策に取り組むものとする。
 一 府民の年齢、立場等に応じたインターネットリテラシーの向上に資する施策
 二 被害者の心理的負担の軽減等に関する相談支援体制の整備
 三 行為者の誹謗中傷等を抑制するための相談支援体制の整備
 四 前各号に掲げるもののほか、第一条の目的を達成するために必要な施策

大阪府/大阪府インターネット上の誹謗中傷や差別等の人権侵害のない社会づくり条例

上記の熱いメッセージを実施するための基本的な施策は3つです。

  • ネットリテラシーの向上
  • 被害者の相談支援体制の整備
  • 行為者の抑制のための相談支援体制の整備

群馬県には見られなかったものとしては、行為者が再び誹謗中傷をしないようにするための相談支援をする点ではないでしょうか。

誹謗中傷も一度始めると、匿名で誹謗中傷しやすいという点から再びする可能性は十分に考えられます。

そのため、そういった人のための相談支援を整備することは非常に合理的であると考えます。

削除の要請ができる

(削除の要請等)
第十二条 府は、インターネット上において、特定の個人(府内に居住し、通勤し、又は通学する者をいう。)若しくは当該個人により構成される集団又は府内の特定の地域に関する不当な差別的言動に係る侵害情報があることが明らかであり、当該侵害情報による被害者からの申出があったときその他必要があると認めるときは、特定電気通信役務提供者に対する当該侵害情報の削除の要請又は国その他の関係機関に対する当該侵害情報の通報を行うことができる。

大阪府/大阪府インターネット上の誹謗中傷や差別等の人権侵害のない社会づくり条例

群馬県での条例にはなかった条文としては、プロパイダーへの削除の要請です。

無闇矢鱈に削除の要請ができるのではありません。

  1. 不当な差別的言動に係る侵害情報があることが明らかであり、
  2. 当該侵害情報による被害者からの申出があったときその他必要があると認めるとき

この2つの要件を充足したときに削除の要請が可能となっています。

そして、被害者というのが前段部分にある「特定の個人若しくは当該個人により構成される集団又は府内の特定の地域」となります。

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佐賀県での誹謗中傷条例

では、今回の記事での主役である佐賀県の誹謗中傷条例をお伝えしていきます。

佐賀県は少し独特な条例の構成となっています。

これまでの群馬県や大阪府ではインターネット上での誹謗中傷に関する単独条例でしたが、佐賀県では「一人一人の人権を共に認め合い、支え合う社会づくり」の条例の中の1つとして定められます。

責務規定

(県の責務)
第2条 県は、前条の目的を達成するため、国、市町、関係機関等と連携協力し、行政のあらゆる分野において、教育及び啓発をはじめとした人権が尊重される社会づくりを進めるための施策(以下「人権施策」という。)を実施するものとする。
(市町の責務)
第3条 市町は、第1条の目的を達成するため、県と連携協力し、行政のあらゆる分野において、人権施策の実施に努めるものとする。
(県民の責務)
第4条 県民は、自らが、人権が尊重される社会づくりの担い手であることを認識し、人権意識の高揚に努めるとともに、相互に人権を尊重しなければならない。
 2 県民は、人権が尊重される社会づくりを進めるため、県が実施する人権施策に協力するよう努めるものとする。
(事業者の責務)
第5条 事業者は、自らが、人権が尊重される社会づくりの担い手であることを認識し、人権意識の高揚に努めるとともに、従業員その他の関係者の人権を尊重しなければならない。
 2 事業者は、人権が尊重される社会づくりを進めるため、従業員の人権意識の高揚を図る等、その事業活動において、人権尊重の視点に立って取り組むとともに、県が実施する人権施策に協力するよう努めるものとする。

全ての佐賀県民が一人一人の人権を共に認め合い、支え合う社会づくりを進める条例

群馬県と大阪府と大きく違う点は、県民にも責務規定となっている点だと思います。

群馬県と大阪府では責務では役割でした。

責務となるだけで、そこには義務が生じるでの意味合いは大きく異なります。

これも本条例が誹謗中傷のみに限定された条例ではなく、一人一人を認め合う人権を擁護する条例だからと考えられます。

誹謗中傷条項

(インターネット上の誹謗中傷等の防止)
第 13 条 県は、インターネットを利用して情報を発信する者の表現の自由を不当に侵害しないように留意しつつ、次の各号に掲げることに取り組むものとする。
 (1) インターネット上の誹謗中傷等(インターネットを利用して、プライバシーの侵害に該当する情報、誹謗中傷に該当する情報その他の他人の権利利益を侵害する情報又は人権侵害行為を助長し、若しくは誘発する情報(以下「人権侵害情報等」という。)を発信することをいう。次号において同じ。)を防止するために必要な教育及び啓発に関すること。
 (2) 県民に関し、又は県民によりインターネット上の誹謗中傷等が行われた場合であって、人権侵害情報等の送信を防止する措置を講ずる権限を有する者等に対して県が人権侵害情報等の削除を要請することが必要と認められるときに、当該人権侵害情報等の削除に向けた必要な措置を講ずること。

全ての佐賀県民が一人一人の人権を共に認め合い、支え合う社会づくりを進める条例

佐賀県では誹謗中傷に関する条文はすべてここに集約されています。

そして、群馬県や大阪府では見なかった「表現の自由を不当に侵害しないように留意しつつ」という留保する文言が入っていることは、進化ではないでしょうか。

また、2号にある「県民に関し、又は県民」の県民ですが、これは運用に関するPDFでは住民票を持って現に住んでいる人だけに限定するのではなく、広く県民を指し、仕事などで佐賀県に来られる人も含むということでした。

まとめ

今回の記事では、地方公共団体の定める誹謗中傷に関する条例をお伝えしました。

他にも定めている県はありますが、代表的な群馬県・大阪府・佐賀県に限定してお伝えしました。

感じたことは、やはり後に作られた県は前の県を参考にするため、進化している点です。

大阪の行為者の相談支援を整備する点に関しては、驚きでした。

今回の講義はこれで終わります。

では、またお会いしましょう!

当サイトでも過去にネットでの誹謗中傷について取り上げています。

よろしければご覧ください。

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